私のグライダー飛行回数が増えたのはここ三年程。始めて飛ばしたのは三十数年前ですから、飛行経験から言うと長いのですが、でもグライダーの飛ばし方が分かってきたのはハンドランチを飛ばしてからだから、ここ十数年位の話ですね。さらにスロープへ通うようになって、またグライダーへの感じ方が変わってきました。飛ばす機体の種類、場所、目的でアプローチの方法は変わるのですが、いずれにしても動力機とは全然別の考え方が必要なことは理解できました。普段動力付飛行機を飛ばしていて、たま~にグライダーも飛ばすという方は結構多いのですが、その考えの切り替えが出来ていない方が非常に多いなぁ~と感じます。飛行機なんだから、考え方は一緒じゃね?と。でも同じ飛行物ながら全然別ものなんですよね~。たとえそれが動力の付いたモーターグライダーでもです。というかグライダーに補助動力の付いたのがモーターグライダーですから、常時モーターオンでその辺を飛び回るのは、もはやグライダーじゃないですけどね(笑)
そんな、たま~にグライダーも飛ばしてみたい方向けのご案内です
➀グライダーは重力があるから飛ぶ
➁どこを中心に重力で引っ張られるかで機体の姿勢が変わる
➂機体の姿勢で速度も変わる
④旋回は合わせ技
⑤各種機体の設定で楽に飛ばせるし、超難しくもなる
という感じで、解説してみましょう
➀グライダーはその名の通りグライド=滑空。空を滑る。良い表現です。そうです空気の中を滑ってるんです。重力によって地面へ向かって落ちていくわけです。ただその落ち方が問題で、石のような固まりだったら真っすぐ地面に突き刺さりますが、グライダーは前方へ滑りながら落ちるように出来ています。その落ち加減を決めるのが翼ですね。前方へ滑るということは地面までの距離を延ばすことに相当します。更には時間も伸ばすことができます。この伸びた時間と距離のことを飛行というわけです。これが無重力の状態でしたらどうでしょう。地面に落ちる力が無いわけですから浮いたままで落ちません。落ちませんが動かないということは、移動ができないということです。これでは飛行「機」ではありませんね(笑)
➁形状は様々でもその物体には重さがある以上重心点があります。重力はその重心点を引っ張る形になります。一方で空気の抵抗は形状による空力中心点に対してかかります。重心点と空力点が一致していれば、物体は地上に垂直に落下しますが、一致していなければその分だけズレながら落下します。それが距離と時間を稼ぐことになるわけです
➂この➀と➁で分かる通り、最も効率よく距離と時間を稼ぐ組み合わせが、滑空比として現わされます。しかし最良の滑空比が最良の飛行性能ではありません。目的によって最大速度が必要な場合もあれば、距離を必要とする場合もあるからです。飛行機においてその選択が可能なのは主翼迎角を調節する機能があるからです。それが昇降舵の役割です。一般的に主翼は胴体に固定されており、昇降舵の動きによって主翼迎角が相対的に変化します。主翼迎角が増えれば揚力は増しますが速度は下がります。反対に主翼迎角が減れば揚力が減り速度は上がります。言い換えれば機体の姿勢がどうなっているかでその後の機速の変化を読み取ることができます
④動力機の場合ですと常に動力で前進し続けているので、機体を傾け昇降舵で主翼迎角を増やすことで旋回できますが、グライダーの場合そう単純ではありません。機体を傾けると揚力が減り降下します。降下すると機速が上がり揚力が増すので機首が上がります。機首が上がると速度が下がります。速度が下がると揚力は減り、動翼の効きが悪くなり、一時的に操縦不能な状態となります。このような流れにならないような操作が必要です。実際に初めてグライダーを飛ばした方の飛行を見ると、正にそのように飛んでいます。グライダーは重力と空気が無ければ飛行できません。その仕組みを理解することが楽しく飛行させることの第一歩なのです。
⑤初めてグライダー(モーターグライダーを含む)を飛ばす場合に一番大事な要素は「重心位置」です。動力機と同じ重心位置では、気持ちよく飛ぶことはありません。一般的な動力付ラジコン飛行機は主翼翼弦の1/3に重心位置を持って来るようにと説明書に書いてありますが、そのままグライダーに当て嵌めてしまい「なんだ浮かないじゃん」「スピードが出ないな」「これダメなグライダーだ」と判断してしまう方が多いのです。「走らないな~、頭を重くすれば走るんじゃない?」とさらに前重心にするケースも多いのですが、これは全く真逆の対処方法です。前重心にすると必然的にノーズを下げるので、一定の滑空角を保とうとしてエレベータートリムをアップにセットします。そうすると一見グライドしているように見えるのですが、水平尾翼が負の揚力を頑張って作り出し、主翼迎角を保とうとするので抵抗が増大し、機速が抑えられてしまいます。旋回しようとするとさらに抵抗が増し、機速が落ちて失速し、舵も効かずに墜落してしまいます。重心位置と主尾翼の取付角には密接な関係があり、こうでなければならないという数値は無いのですが、適正重心位置の最も簡便な見分け方は、上空から斜め45°降下をした時に、機体がどういう航跡を描くかで判断します。45°を維持する場合はほぼ適正。上昇に転じる場合は前重心。降下角度を増していく場合は後重心と言えます。市販の機体の場合は取付角は既に決まっていますので、機体の説明書にある重心位置から開始して、重心位置を前後させながら、ピッチ方向の動きが過敏過ぎず、速度を上げても頭上げをしないような重心位置を探りましょう。先ずはそこが決まらないと、舵角の設定もできませんから。適切な重心位置だと舵角が少なくて済みますので、その分抵抗も少なくなり速度が上がります。速度が上がれば揚力は増し、少ない迎角で済みますので、さらに抵抗が減ります